2018年7月10日火曜日

姫島(2018. 7.10)

当初の予定では、今回は岡山県の備中松山城に行くつもりだったが、西日本を襲った豪雨の被害により、岡山と城のある高梁市を結ぶ伯備線が不通となり、行くことができなくなった。すばやく復旧した新幹線と、雨の影響のない船を使って行くことができる、大分県姫島に行くことにした。大分県というと遠い気がするが、姫島は周防灘にあり、瀬戸内海島歩きシリーズのひとつとも言える。
徳山から周防灘フェリーが出ており、2時間で大分県国東半島の竹田津港に着く。そこから、伊美港に移動し、伊美港から姫島まで、村営のフェリーで20分。移動にかかる時間自体はそんなに多くない。ただ、待ち時間がかかるのだ。周防灘フェリーの一番早い便は、なんと夜中の2時。仕事を終え、広島駅から最終のこだまで徳山に行く。

先日大津島に行ったときも来た徳山港。着いたのは、午後11時45分頃。出港まで2時間以上ある。徳山駅まで戻り、2F待合室の椅子に腰掛け音楽を聴きながらすごす。隣に、ノートパソコンで作業する若者がいた。こんな時間に… 彼も時間待ちなのだろうか。

出航の時間が近づいてきたので港に戻る。受付表に住所氏名などを記入し、乗船料¥2700に燃料調整費¥100足して、合計¥2800を払う。受付のおじさんが聞いた。
「向こうでのお迎えはあるんでしょう?」
確かに竹田津に午前4時に着くので心配されたのだろう。面倒くさいので「はい」と返答。

フェリーが入ってきた。

トラックを主に乗る車は多い。

乗客として乗る人は自分以外には誰もいない。座敷は貸しきり状態。

甲板に上がりしばらく過ごす。

徳山港が遠くなる。

暗闇の海に船舶の灯りがきれいだ。大津島粭島の間を過ぎると、船の明かりも消えて暗闇。目が慣れてくるとうっすら島影が見える。天上には星が輝く。星を見るのも久しぶりだ。屋根に上り、月や星を見上げていた夢多き少年時代を思い出す。そして、あれから今日までの生き様を振り返り、なぜか悲しい。
座敷に戻り横になる。朝からの島歩きに備えて寝ておかないとと思うが眠れない。当初は姫島だけのつもり(往復フェリー)で出発したが、ふと思う。せっかく大分に行くのだからこの機会に姫島以外に行けるところはないだろうか。2つの候補が上がった。豊後高田市の「昭和町」と宇佐神宮。検討した結果、宇佐神宮にする。伊美港から宇佐までのバスは来る前に調べておいた。伊美港から宇佐駅に行き、宇佐神宮参拝して帰るには、伊美港12:42のバスに乗らなければならない。そのためには姫島発11:35の船に乗らなければならない。そのためには、島歩きの一部はレンタサイクルを利用… 眠るどころか、頭の中をプランが駆け巡る。

結局一睡もせずに竹田津に到着。車は出てくるが、乗客として下りてきたのは自分だけ。この便を旅客の移動として使う人は、おそらくいないのだろう。

売店もあるがもちろん閉まっている。

夜の中を、伊美港に向かって歩き出す。

街灯がなくなり、暗闇の中を歩く。遠くに先ほど下りた竹田津港が見える。フェリーは車を載せて、折り返し徳山に向かった。歩いていると時おり車が通るが、ヘッドライトに照らされた、リュックを背負った男が歩く姿は異様だろうと想像する。

伊美港に抜けるトンネルについた頃には、すでに夜が明けてきた。

国見町を歩く。ウォーキングしている人に出会った。おそらく自分が竹田津港から歩いてきたとは思わないだろう。ウォーキングする者としての挨拶を交わす。

ようやく伊美港が近づいてきた。竹田津港からここまで所要時間約1時間15分。

伊美港に到着。

姫島行きは6:20。

待合室にジオパークの案内があるので、島歩きの資料として撮影。

桟橋に出て姫島を臨む。

姫島フェリーは姫島村営だが、待合室はきれいに整備されている。

姫島行きフェリー。乗船料は¥570。姫島から本土への通勤だろうか。たくさんの人が下りてきた。

約20分で姫島港に到着。

形のきれいな矢筈岳。標高は258m。姫島は火山活動によってできた島だ。粘土の高い溶岩が流れ堆積してできたものだろう。
姫島:第四紀更新世前 - 中期の堆積岩類を基盤とし、約30 - 20万年前の大海、矢筈岳、金、稲積、城山、達磨山、浮洲の7つの火山(これらを総称して姫島火山群と呼ぶ)の噴火活動によって形成された島である。島北東部の観音崎には、この噴火活動で形成された黒曜石が露出した断崖がある。黒曜石の露頭は日本では珍しく、「姫島の黒曜石産地」として2007年(平成19年)7月26日に国の天然記念物に指定されている。(ウィキペディアより)

まず観音崎に向かう。これは島内唯一の信号機。交通量の少ない姫島では必須のものではないが、本土に出た場合の学習用に設置してある。

姫島は幅は狭い。歩いてしばらくすると港と反対側の海岸に出る。向こうに見えるのは観音崎のある岬。手前は車エビの養殖場。姫島は車エビの養殖が盛んで、マップで見る限りここ以外にもたくさんある。

観音崎に行くには小山を登る。

杖を借りて登山開始。寝不足の体にはきつそうだ。

高い山ではなかったのですぐに展望台に到着。

展望台から見る観音崎。

展望台から見る千人堂。

千人堂に近づく道があったのでさらに進む。

千人堂。
千人堂:島でも屈指の景勝地である観音崎にある小さなお堂で、1寸2分の黄金の馬頭観音像が祀られている。大晦日の晩に債鬼(借金取り)に追われた島民千人を匿ったとの伝説があり、大晦日の晩に千人堂に詣ると借金取りから逃れられると言い伝えられている。千人堂は、山立て(陸上の特徴のある地点を目印として複数定め、それを頼りにして海上での船の位置を定める方法)で漁場で決める際の目印としても利用されている。千人堂の下の断崖には、灰白色の黒曜石の層が露出している。この特徴ある灰色の黒曜石を材料とした石器は、中国地方や四国地方でも発掘されており、古代における交易の広がりを示している。姫島の黒曜石産地は2007年7月26日に国の天然記念物に指定されている。(ウィキペディアより)

千人堂から見る観音崎。

黒曜石の原石。これを加工するとあの黒光りする石になるのか。

はるか昔、縄文時代にも姫島の黒曜石は交易された。やじり製作の必需品だったのだろう。先ほど乗ったフェリーの航路を、黒曜石を積んで丸木船で渡ったのか。

観音崎から下りて港の集落に戻る。途中「姫島七不思議」のひとつである浮洲の案内。

よく見ると、写真中央に海から出た石が写っている。

ズームすると…
姫島は、火山の島であると同時に、神話の島でもある。
姫島七不思議:『古事記』等に記された「国産み」神話で、伊邪那岐(イザナギ)・伊邪那美(イザナミ)の2神が、大八島の後に続けて産んだとされる6つの島のうち、4番目に産んだ女島であるとされる。(ウィキペディアより)
姫島七不思議は、島の伝承にちなんだ名所である。今回、興味深かったものは記載する。

姫島の集落を回ってみる。名産の車エビを食べれたらと思うが、ネットで調べた「姫乃家」は火曜日定休であった。では、名産品販売所はと思ったが、ここも定休日。

車エビはもう一軒の「かのや」に期待することにして、島歩き。なぜか名前を知っているノウゼンカズラが咲いている。

小学校では子供たちが元気にサッカーをしている。先ほどから歩いてきて感じるのだが、よくある離島のけだるさに反して、姫島は妙に活気があるのだ。すれ違った中学生は決まって向こうから「おはようございます」と挨拶して来た。姫島の人口は年々減って高齢かも進んでいるが、2018年時点で、在籍数は小学校69名・中学校32名。休校には至っていない。

小学校の裏にある「庄屋古庄家」。代々製塩業・庄屋を営んできた旧家の跡。郵便局の跡もある。

中に入ると、古い井戸の跡。

母屋の跡。

母屋の中にある作業場。

庄屋古庄家から南に下ると、若者宿なるものが会った。中央公民館らしい。

港に帰り、レンタサイクルをと思うが、まだ開いていない。売店のおばさんに聞いてみるが、おそらく9時からだろうとのこと。定休日ではないだろうかと心配になる。9時まで港待合室の2Fで待つことにする。

大崎上島にもあった電気自動車もあるが、ここは定休日ではない。9時~とあるので、1時間¥2000と高いが、まんいちレンタサイクルが借りられなければ、これにしようと考えていると、8時半過ぎて、おばさんが「開きましたよ」と親切に教えてくれた。

「東みやげ店」。住所氏名を記入し、念願の自転車を借りる。1時間まで¥200、後は1時間ごとに¥100。

レンタサイクルは、もう1軒あったが、まだ開いていなかった。

自転車に乗って、さあ出発。海岸沿いのブルーラインを走りジオパークを見て、東端の姫島灯台まで向かうコース。

まず、姫島海水浴場で駐輪。

きれい砂浜が広がる。

砂浜から、姫島港方面を見る。左はこれも火山活動でできた達磨山。

 自転車のペダルがやや重いが快調にブルーラインを走る。

海蝕崖(通称:鷹の巣)

大海のコンボリュートラミナ。
コンボリュートラミナ:大海地区の東側に、ほぼ垂直に切り立つ崖の7~8mの場所に見られる。火山活動や地震などによる振動で、硬い地層の間に挟まれた軟弱な堆積物中の水分が液状化現象で排出され、地層内部の構造が複雑に変形したと考えられている。 (いつもNAVIより)

大海の褶曲構造。

姫島に大雨の被害はなかったのかと思っていたが、ここでがけ崩れの跡に出会う。ここに来るまで、通行止めのポールはたっていたが、車用だろうと判断してすり抜けてきた。ここも脇を通らせてもらう。

さらに進むと、今度は完全に通行止め。作業員が作業している。その中の一人に
「通行止めのポールが立っていたでしょう。来ちゃダメですよ。」
と叱られ、やむなく引き返す。

マップで見ると、尾根沿いの県道に上がる道があるので、登ることにする。坂道なので、サイクリストではない自分は手押しで登る。

汗を拭きふき、県道まで上り、工事中で片側通行のトンネルで落とした帽子を拾い、後は下り坂で楽勝、拍子水温泉まで到着する。当初の予定ではこの温泉に入るつもりだったが、平日は12:00から開業。今日はパスする。

拍子水。その名前は、お姫様が手拍子を打ったら水が湧き出たとの伝承に寄る。

25℃の炭酸水素塩冷鉱泉。

絶えることなく湧き出ている。

次の姫島灯台は、砂州で繋がった稲積にある。やや高台にあるので歩いて登ることになる。どうしようかと迷いながら自転車を漕ぐ。

登山口まで来る。気温はかなり高く熱い。先ほど拍子水まで坂を下りてきたが、今度は自転車を押して上らなければならない。あの灯台まで登ると往復30分はかかるだろう。宇佐神宮に行くことにしたので、11:30までは港に戻らなければならない… など否定的要素が浮かぶ。先日、船の時間に間に合わせるためひたすら早足で歩いた平群島の経験を思い起こし、今日はふもとで引き返すという結論に至る。

せめて、灯台をズームイン。

帰る途中にあった姫島七不思議のひとつ、浮田。
浮田:昔は大蛇の夫婦が住んでいた池で、誤って大蛇もろとも池を埋め立てて田にしてしまったために、大蛇の怒りで田が浮いているように揺れるという。(ウィキペディアより)

さて、これから港まで戻るわけだが、本来なら見えている島の南海岸沿いの道・平坦なブルーラインを戻ればいいのだが…

今日は通行止めのため、今来た坂道を登ることになる。ほかに通る道はない。

自転車を押して上がる。暑いので熱中症にならないように、タオルの上から帽子をかぶる、例の南方日本軍兵士のスタイル。飲料のペットボトルの水を直接頭にたらすが、すぐ乾く。

坂の頂上にあったトンネル工事現場が近づいてきた。あと150m。

トンネルを通過。たぶん後は下り坂だろう。出口で、おじさんに確認する。そのようだ。一安心。

港に帰る途中、アサギマダラ休息地。これはNHK「小さな旅」で紹介された。この番組も姫島訪問のきっかけのひとつになった。
アサギマダラ:渡りをする優雅な蝶で、姫島に自生するスナビキソウの蜜をもとめて、5月上旬頃から6月上旬、南の地から飛来し、姫島で休息したのち、涼しい北の地に向かって飛び立ちます。10月中旬頃、その世代を交代した蝶が、北から暖かい南へ向かう途中で、姫島に生えているフジバカマの花の蜜をもとめて、姫島で休息します。(豊の国千年ロマン観光圏のHPより)

自転車でもかなりしんどかったが、使わなければとうてい船に間に合わなかっただろう。追加料金¥100、合計¥300を払ってお返しする。

さて、できれば車エビの昼ごはんと思うが、もうひとつの食堂「かのや」は「心をこめて準備中」。 現在10:45。仮に11時オープンとしても、せわしいだろう。

かのやはあきらめて、ひょっとしたら島で唯一のスーパーに弁当でもあるかと思い入る。残念ながら、車エビも弁当もなかった。お茶とちくわとパンを買う。レジは最新の自動つり銭器だった。自分でお金を入れたらつり銭が帰ってくる。やはり姫島はほかの離島とちがうなと感心した。

港横の公園で飼ってきたパンとちくわを食べる。パンとちくわ、奇妙な取り合わせではある。

急ぎ足だったが姫島島歩き(半分自転車)を終える。

11:35の伊美港行きフェリーで姫島を後にする。


宇佐神宮(2018. 7.10) に続く⇒

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